薬剤師として、患者さんとのコミュニケーションがスムーズにいかず、クレーム対応に悩んだ経験はありませんか?
そんな悩みを解決する鍵が「カウンセリング技術」にあります。
カウンセリングと聞くと、専門的で難しいイメージを持つかもしれませんが、実は薬剤師にも簡単に取り入れられるテクニックがたくさんあります。
本記事では、傾聴、感情分類、自我欲求へのアプローチなど、薬剤師が知っておくべきカウンセリングの基本技術を具体例とともに解説します。
これらのスキルを身につけることで、患者さんの本音を引き出し、信頼関係を築くことができ、結果として患者対応の質を劇的に向上させることができるでしょう。
さあ、一緒に薬剤師としての新しいステップを踏み出しましょう!
薬剤師として現場で15年カウンセリングを使ってきた経験から、ヘルスカウンセリングベーシックを元に薬剤師がカウンセリングを習うメリットとその基礎についてお伝えします。
薬剤師がカウンセリングを学ぶと患者対応がぐんとアップする!
皆さん薬剤師として患者さんの前に立ったときにただ単に薬の説明をするだけではなくて、その患者さんのキャラとか雰囲気とかそういうもので判断して投薬しているかと思います。
全く話を聞いてくれないおじさまや、ちょっとした言い回しを気にしてしまうおばさま、働きざかりのサラリーマンが返事しかしないで早く終わることしか気にしていない・・など
話を展開してそこに薬剤性の何か問題点を見出したいのに全く付け入るスキがない患者さん多くないですか?
薬剤師がカウンセリングを学ぶことによってかなりこの話の展開を変化させることができます。
なぜなら、あなたはカウンセリングを用いることによってその患者さんの心を開くことができるからです。
魔法のような感じにも思えるかもしれませんが、世のカウンセラーの方はどなたも行っています。
その知識とスキルがあれば、あなたの服薬指導は明日から確実に異なるものになりませんか?
薬剤師がカウンセリングを学ぶと薬局の患者クレーム対応に悩まなくなる!
カウンセリングを薬剤師が学ぶことによって患者さんの心を開かせることができると話しましたが、これをクレーム対応に応用することができます。
クレームというのはいわば怒りの感情です。
その感情をカウンセリングできれば怒りが収まり、クレームを収束させることができると思います。
今まで怖くて仕方なかったクレーム対応に真っ向から挑むことができます。
場合によってはこのクレームから患者さんがファンになることもあります。
カウンセリングスキルによってあなたの心も整えることができる
カウンセリングを学ぶことでさらにメリットがあります。
それはあなたの心をカウンセリングで整えることができるからです。
カウンセリングを学び、そのやり方を実際の自分の悩みの解決に用います。
感情は1回のカウンセリングで出し切りませんが、あなたがいつでも自分に対してできるので何回もやることができるので深い感情があったとしても解決に導けます。
実際のやり方① 薬剤師カウンセリングは傾聴ができればほぼ患者の心が掴める
カウンセリングをするにあたってこの「傾聴」が100%完璧にできていないと、そもそもクライアントである患者様からの信頼を得ることができません。
逆にこの傾聴ができているだけですぐに信頼を得て、カウンセリングを導入しやすくなります。
当然ですが、「はい、はい」と言いながら話を聞いてくれない人には心開かないですよね?
反対に、「そうなんですね〜、それは大変ですね」と的を得て聞いてくれる人にはなんとなく信頼してしまいますよね?
では傾聴ってただ聞けばいいの?って考えるかもしれませんが、コツがあります。
それは、「感情に寄り添う言葉を投げかける」「感情の入った言葉をオウム返しにする」ということです。
人っていろんなことを話しますが、その内容の端々には感情が散りばめられています。
人は感情の生き物なので、理性では食事に気をつけたほうがいいとか薬をしっかり正しく飲んだほうがいいとか規則正しい生活がいいとか
わかっているけどそれが感情によってできません。
今日はだるいから嫌だとか、なんとなくむしゃくしゃしたからお菓子を食べてしまうとか、血圧血圧うるさく言われたくないとか、さまざまな感情を交えて生きています。
- 人間は感情に左右されて行動しているので、正しいと思ってもそれを行えないことがある
- 自分の話を聞いてくれる人、感情を聞いてくれる人を信用する傾向にある
この世の中に感情を吐き出せる場所は少ない
感情を吐き出す場所はこの世の中にはなかなかありません。
- キャバクラのお姉さん
- スナックのママ
- ホストのお兄さん
なんかは感情を吐き出す場所としてうってつけのところなのかもしれませんが、こういうところへ行っていない人が大半です。
みんないろんな感情を抱えて、それを聞いてくれる人が誰もいない中で悶々と過ごしているわけです。
井戸端会議やママ友の会話を見ているとわかりますが、みんな自分の言いたいことだけ言っているだけ聞きたいことを聞いているだけであって、誰も他人の感情には共感していません。
(共感しているふりはあるけど)
自分の感情をわかってくれる人に好意を抱く
そんな中、自分の感情が入ったその文言をオウム返ししてくれる人がいたら、
患者さんは「自分のことわかってくれるんだ!もっと話そう!」となるはずです。
そう、患者さんが一番聞いてほしいところは患者さんの感情について聞いてほしいのです。
その感情言葉の裏には分類できる感情が入っております。
血圧高い患者さんの例
Aパターン
患者さん「今日は血圧が高くて嫌になっちゃう」だったら、
この嫌になっちゃうというところが気持ち言葉になるのでそこに気持ちを交えてオウム返ししてあげます。
薬剤師「血圧が高くて、嫌になっちゃうんですねー。」と返します。
Bパターン
患者さん「なかなか血糖が下がらなくてね。私は食事とかすごく気をつけて頑張って
いるんだけど・・・」だったら、
すごく気をつけて頑張っているんだけど・・・に感情が入っているのでそこを中心に考えて、
薬剤師「すごく気をつけて頑張っていらっしゃるんですね。」
といった風にオウム返しをしてあげると、多くの患者さんは
「あ、こいつかなり俺の(私の)ことわかっている!」って思います。
カウンセリングの第一歩はこの傾聴のスキルであり、傾聴というのは感情言葉をオウム返しをするということになります。
- 患者さんの話す内容で感情が入っているところを中心にオウム返しをする
- 正しくオウム返しができると、その後もスムーズに行える
実際のやり方② 薬剤師カウンセリングで傾聴ができたら感情分類を行う
患者さんが話す言葉の裏にどんな感情があるかを紐解く
感情言葉は裏に感情が隠されているので、カウンセリングはこの感情言葉を紐解いていくことになります。
Aパターンだったら、「嫌になっちゃう」というのが、
怒り:頑張って色々やっているのに血圧が高くてどうなっているんだ!
悲しみ:いろんなこと試したのに血圧が高くて何をやったらいいやら。
不安:このまま血圧が高くなっていくとどうなるんだろう。
という感情に分類されるはずなので、ここからさらにカウンセリングへ移行していきます。
カウンセリングで扱う感情は5つに集約される
感情には以下の5つに分類されます。
・喜び
達成感、感動、期待、明るい
・怒り(自己嫌悪)
激怒、許せない、ありえない、自分が嫌い、自分が許せない
・悲しみ
悲しい、ガッカリ、残念、
・不安
どうしよう、心配、不安、どうなるかわからない
・辛い
辛い、ずっと我慢している、もう限界
傾聴して出てきた悩み→どの感情なのか当てはめてあげる
傾聴をしていくことでこれらの感情に当てはめていくことになります。
感情に関する言葉からその感情を分類して行きます。
具体的に話しますと、傾聴の回での血圧が高い患者さんの場合、
「嫌になっちゃう」というのが、
怒り:頑張って色々やっているのに血圧が高くてどうなっているんだ!
だったとします。
その場合はこの頑張って色々やっているのに血圧が高くてどうなっているんだ!という怒りの感情に対してケアしていきます。
「怒り」というのは何か当然起こるべきものが起こらない、なされるべきものがなされない時に起こる感情です。
血圧が絶対に下がる行動をしているのにそれが行われていない、そういう状態なので怒りというものが発生します。
ただしこれも感情なので、一時的なものです。
カウンセリングの流れでしっかりとこの感情をケアしてあげたら患者さんのこの怒りも収まり、どういう行動を取ればいいかということへ焦点を変えることができます。
感情へ当てはめられるレベルまで傾聴する
まずはこの怒りに傾聴してもう少し怒りの内容を細かく聞いていきます。
感情言葉「困るんだよ」に感情を入れて聞き返すことで隠れていた本音がわかります
ここでは感情が「困るんだよ」に入っているのでこの困るんだよに感情を入れて聞き返してあげます。そうすると本音が出てきやすくなります。
薬剤師「食事気をつけたり、運動をしているのに血圧が上がって困るんですね」(困るんですねに共感した聞き返しを行う)
患者さん「そうなんだよ、会社にも血圧のこと言われるし、カミさんにも言われるし。自分では気をつけているつもりだし薬だってしっかりと毎日飲んでいるんだよ!」
それから患者さんは本音とか秘めていたもの全てを吐き出すように話し始めます。
これらを傾聴して、感情をあらわにしてから自我欲求を確認していきます。
実際のやり方③ 感情分類から自我欲求へアプローチ
自分がどうしたいのか、どの欲求が満たされなかったから感情が発生しているのかを探っていきます
3種類の自我欲求があります。
- 「自分を大切にしたいのか」
- 「他人を大切にしたいのか」
- 「自分の思い通りにしたいのか」
この自我欲求が満たされないから感情が生まれています。
血圧が下がらない患者さんの例でいくと・・
先ほどの例でいくとですね、
「血圧がなかなか下がらない」ということに対する自我欲求を確認していきます。
実際にはちょっと怒ってる状態ですので、なかなかで自我欲求っていうのは確認取れないかもしれません。
けれども、もし信頼関係があって確認できそうであれば、自我欲求がなんであるか確認します。
具体的には
「自分のために自分の体を大切にしたい」「健康な体を取り戻したい」そういった意味で血圧を下げたいんですか。
それとも
「他人のためにもっと自分が働いて家族のために子供のためにちゃんとしたい」といった思いから自分の体を大切にしたいと思っているのか
それとも
ただ「自分の思い通りにしたいと思う」「しっかりと自分の思い通りになって欲しい」という思いから血圧が下がってほしいと思っているのか
その3つのうちのどれかを聞いてあげます。
感情と自我欲求をまとめたところで、最後のアプローチをしていきます。
例えば「自分の体を大切にしたい」という思いから血圧下げたいと思っているという場合であれば、このように説明してあげます。
「自分の体を大切にしたいと思ってらっしゃるんですね。
そう言った思いから血圧を下げたいと思っておりまして、それが下がらない状態であったので、あなた自身は怒りというような感情を抱えているんですね。」
というような流れにしてあげると、最終的に感情がまとまって、すっきりと消えていきます。
患者さんの内側から感情が整理されていきます。
ここを行うまでが、ヘルスカウンセリング ベーシックの一般的な流れになっていきます。
カウンセリングは「怒り」以外の感情から練習していく
これを応用するわけなんですけども、怒りの感情だとすると慣れないうちはその状態からカウンセリングはできないかと思います。
なので、最初はクレームなどを対応するのではなく、「怒り」以外の感情を整理していくことで慣れていくのが良いと思います。
結構「悲しみ」「不安」などの感情を持って来局される患者さんが多いのでそういう方の気持ちを聞いてあげるだけでだいぶ練習になります。(場合によってはかかりつけ薬剤師に指名されるかも)
表面の感情の奥にさらに意識していなかった感情があるのでそこまでカウンセリングをしてあげる
今感情をリセットするところまでお話ししましたけれども、
この後「さらに今はどのような感情がありますか」
と聞いてあげます。
その時に、「さらに実はこういう風な思いがあるんだ」っていうような形で別の感情が出てくることがあります。
「血圧が下がらない」っていう風には怒っていらっしゃって、それ以外にまた違う感情が入っていてこんがらがっている状態の方が多いです。
一つ表面の感情を取っていくと奥の感情が見えてきます。
その感情も時ほぐしていきますと、カウンセリングとしてすっきりした状態になってくると思います。
なかなか慣れるまで大変かと思いますけれども、これに関しては興味あればしっかりとちゃんとレクチャーを受けた方がいいかと思います。
なので、ざっくりとしたカウンセリングの流れを説明してみました。
高度な精神疾患の患者様のカウンセリングは相当熟練度を上げなければならないし危険が伴うので注意
高度な精神病の方に対してこのヘルスカウンセリングベーシックだけでは対応できないと思います。
躁鬱病の患者さんで難治性の精神病の方に関しては高度なカウンセリングのスキルがないと対応できません。
ある程度傾聴してあげるだけにしたほうが良いでしょう。
本当に専門のカウンセラーの方が過去のクライアントさんを呼び起こしたりする高度なテクニックが必要なので興味ある方はしっかりとカウンセリング講座を受講されてください。
ベーシックなやり方が問題なくできてからになるかと思いますし、年月も多くかかると思います。
なので、ブログに書いたやり方については軽度の悩みを持っている方や軽いうつくらいの方にやってあげてください。
ヘルスカウンセリング学会のカウンセリングを参考にしています
参考までに以下が私が習っていたカウンセリングになります。
まとめ
- カウンセリングを薬剤師が学ぶことで服薬指導は格段に良くなる!
- カウンセリングを学んだ薬剤師はクレーム対応に強くなる!
- カウンセリングの基礎は傾聴
- 感情を解きながら感情分類する
- 自我欲求を見極めアプローチする
- 難しい精神科の患者さんは専門医にお願いする
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